日本ローカーボ食研究会

日本ローカーボ食研究会

第9回定期勉強会 印象記:前田惠子

もくれんクリニック 前田惠子

当日小雨の中、会場がいくらかわかりづらく、数分遅刻してしまいました。会場地図を片手に迷っておられる発表者の村元先生に階下でお会いし、免罪符を得た気持ちで入場しました。
小早川先生のご提示なさった症例は、DKAの危惧から明らかに入院適応と考えられ、私のワークグループの医師の先生方も、検討する以前にまず入院、とおっしゃいましたが、入院を嫌がる患者さんを何とかしようと考えるのが今回のテーマでした。すでに患者さんご本人が独自の食事制限(ローカーボもどき)をされていらっしゃったため、小早川先生の治療方針をご存知の上受診なさったのか、いずれにしてもローカーボ食に親和性のある患者さんなのだと思いました。各グループから、投与薬剤についてはいくらか気を使いながら、ローカーボ研究会らしい回答が発表されましたが、実際になされた治療はセオリー通りインスリンを併用した上でローカーボ食を取り入れており、本研究会の教科書のサブタイトルでもある「ゆるやかな糖質制限」を体現しているように感じました。
医師のほか、薬剤師、栄養士の皆さんと症例検討することは、普段一人では思いつかない気付きをいただけるので、とても新鮮です。私は平生、主に超高齢者を対象に診療しているため、どちらかというと糖質制限よりもむしろ栄養向上や食形態の工夫の視点が主になりますが、多職種で連携するという点においてはいずれの現場でも同じく重要なのだと感じました。
村元先生のメタ解析のお話、次々と強化療法による恩恵が否定され、ACCORD試験から薄々知ってはいたものの、きっちり数字で示していただいたことで、糖尿病の複雑さを再認識しました。私が働きだしたころ、今ほど治療の選択肢もなく、内分泌科において糖尿病は血糖を下げてなんぼ、みたいなところがあり、低血糖発作を起こしつつコントロールされていた記憶です。もちろん低血糖は起こさない方がいいのですが、心血管イベントを増やすから、という視点ではなかったはずです。
今良いと言われていることが10年20年先はどうなっているのかわからないと思うと、日常診療での発言により慎重になってしまいます。前職では健診の異常値をきっかけに来院される方も多く、メタアナリシスの結果はその方の治療開始時期、方針、治療へのモチベーションなどのために大変重要になりますが、知れば知るほど複雑となり、目の前の患者さんにうまく適応して説明できるのか不安になってきました。
灰本先生のお話は、最後のスライド「私の治療哲学」に集約されていました。また、「痩せないほうがよい」というのも、糖尿病に限らず超高齢者の方々をみていると実感することです。今私が担当している97歳の男性、立位が不安定で身長が正確に測れていませんが、おおよそBMI30くらい、足が悪いので体重は軽いほうがよいのですが、食欲良好で、おやつもたくさん食べられます。寝ながらでもポリポリされているそうで、「痩せないかんなぁ。」と口にされてはいますが、血糖も基準値内で内科的な問題はあまりなく、果たして今この方にダイエットが必要なのか、考えてしまいます。ただ、このままだとさらに体重が増えそうなので、現状維持だけをお願いしています。
糖尿病(合併症は除く)にかかわる医療費は1兆円を超えているそうで、どこからみても市場価値は高いですが、食事療法は患者さん自身が日常的に管理できるところが魅力だと思います。その点ローカーボはわかりやすく、選択肢の一つとして医療者からのお仕着せでなく、自らコントロールしていくのに、良いツールだと思います。
糖質制限というと「ライザップ」などが目立ってしまう印象ですが、今後も科学的観点、医療者の立場からローカーボを学んでいきたいと思います。

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