日本ローカーボ食研究会

日本ローカーボ食研究会

第3回定期勉強会印象記:小早川 裕之

 早くも第3回目を迎えた勉強会ですが、今回は製薬メーカーとの共催となり、より大きな会場で開催されました。従来の症例検討と論文抄読会、そして栄養学に関するレクチャーに加えて、著名な糖尿病専門医に講演をしていただくという、充実した内容となりました。

 まず、灰本クリニック院長の灰本 元先生が、経口糖尿病薬(アクトス、アマリール)を中止してローカーボ食に導入後、食事療法が確実に実践できているにもかかわらず血糖値が急激に悪化してしまった症例を提示されました。
 夕食の炭水化物を除去したことで夜間のインスリン分泌が低下した結果、糖新生が急増したのが原因と考えられ、メトフォルミンの追加で血糖コントロールが改善した、非常に示唆に富む症例でした。長期にわたってSU薬などの経口血糖降下剤を使用していた例では、低血糖を防ぐための反応として糖新生が亢進しやすい状況にあるのかもしれません。ローカーボ食が普及するに従ってこのような症例が増えてくることが予想されます。ローカーボ食を開始した直後にこうした現象が起きる可能性を常に念頭に置いておくべきであると考えます。

 次に、むらもとクリニックの村本秀行先生が、ADAの最新食事ガイドラインの抄読をされました。ADAは今のところローカーボの優位性を認めてはいませんが、少なくともローカーボとハイカーボを同列に扱っているという印象でした。日本糖尿病学会のガイドラインがローカーボ食を無視しているのとは対照的です。

 岐阜ハートセンター管理栄養士の佐藤歩美先生は、各食品の脂肪酸の組成の特長に関するレクチャーをされました。ローカーボ食を実践する際、炭水化物を減らす代わりにどのような脂質を摂取すべきかは重要な問題で、非常に面白いテーマなのですが、今回はわずかしか時間がなかったため十分にお話が聞けず残念でした。次回に期待したいと思います。

 最後に、東京都済生会中央病院の島田 朗先生が緩徐進行I型糖尿病(SPIDDM)を中心としたI型糖尿病に関する講演をされました。
 島田先生は、日本では数少ないⅠ型糖尿病の専門家であり、豊富な臨床経験と多くの臨床研究の業績をお持ちです。したがって、講演の内容も非常に分かりやすく、明日からの臨床にすぐに役立つものでした。
 Ⅰ型糖尿病の中でも、劇症型や急性型は発症から数日~数カ月という短期間で急速に悪化してケトアシドーシスをきたしインスリン依存状態となるので診断は容易だが、緩徐進行型(SPIDDM)は、抗GAD抗体が陽性であってもインスリン依存状態となるまでに1年以上かかることが多く、発症時は肥満していることもあるので、重症の2型糖尿病と誤診しやすいとのことでした。糖尿病と診断されて1年以内の人の中にSPIDDMが15%程度いるというお話を聞いて、日常臨床で遭遇する可能性が高い疾患であることを実感しました。さらに、糖尿病と診断された時点で抗GAD抗体が陰性であっても、経過中に陽性化する可能性もあり、2型糖尿病と診断している患者さんのコントロールが悪化してきた時などには注意が必要であると感じました。
 治療に関しては、SPIDDMのインスリン分泌能を温存し、インスリン依存状態になるまでの期間を延ばすためには、早期に少量のインスリンを使用する方がSU薬を続けるよりも成績が良いとのことでした。また、アクトスよりもメトホルミンの方が成績が良いというお話もありました。1型糖尿病は自己免疫疾患であり、一方2型糖尿病は生活習慣に起因する糖代謝異常なので、病因は全く異なります。しかし、SPIDDMとインスリン分泌の低下した2型糖尿病の病態はかなり似ているので、先生のこのような治療方針は重症2型糖尿病にも応用できるのではないかと思いました。

 全体を通して、糖尿病診療、ローカーボ食の重要なポイントが数多く提示され、それに対して活発なディスカッションが行われ、非常に有意義な勉強会であったと思います。
島田先生の特別講演も、糖尿病治療の本質をついた大変説得力のあるものでした。今後も、この勉強会がさらに充実したものになっていくことを祈念しております。

 最後に、このような立派な勉強会を企画していただいた灰本 元先生、共催していただいたサノフィ・アベンティス株式会社に感謝の意を表します。

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