日本ローカーボ食研究会

日本ローカーボ食研究会

第11回定期勉強会 印象記 大西歩美

岐阜ハートセンター 管理栄養士 大西 歩実

 ①ワークショップ形式で行われる症例検討会、②臨床栄養学講義、③糖質制限食講義の3つのプログラムによって構成された勉強会。2年間、6回にわたる講義の総復習となる勉強会でした。
今回の症例検討会は「ローカーボ食実行中にHbA1cが急激に1.7%も悪化した症例」です。2010年~2014年まで0.5CARD(夕食のみ糖質を1/2)を実践し、HbA1c6.2~6.8%、体重54.0㎏で安定していた69歳、女性の患者さん。2014年4月の診察時にHbA1c8.5と急激に上昇。問診では食事や生活の乱れはあまりなさそうとのことでした。5~6人1グループとなり、医師、薬剤師、管理栄養士が様々な視点で議論を行います。何が原因でこれほどまでHbA1cが悪化したしたのか、この時点で何をすべきかなど、ひとつひとつ確認をしていきます。食事内容の詳しい再調査や生活の変化の確認、OGTT再検査、CT検査など様々な意見が各グループから発表されます。結果は、この患者さんは膵がんでした。5月末から放射線治療+TS-1内服治療が始まりました。再び、この時点で糖尿病の治療はどうしていくかをグループごとで議論します。がんと診断されたため、糖質は制限せず、インスリンを使って体重の減少を防ぐという治療法と、厳しい糖質制限を行い、脂質をたくさん摂るようにしてがんに立ち向かうという全く逆の意見が出たことは非常に興味深いものでした。HbA1cが急激に上昇した時点で原因を探るための適切な検査をきちんと行うこと、その結果に対してどのような治療方針でいくのかを、目の前の患者さんに合わせて決めていくことの重要性を再確認することができました。
 次は管理栄養士、渡邉さんによる「糖質制限食で中食・外食を実行するには」とういう講義です。外食のメニューやコンビニ、スーパーの惣菜で、わりと安心して食べられるメニュー、注意が必要なメニューなどを学びました。自らたくさんのお店に足を運び、詳しく調査されていました。普段、栄養指導で「栄養成分表示を確認して炭水化物(糖質)の少ないものを選んでくださいね。」と言ってはいるものの、実際「この食品には何グラムの糖質が含まれているでしょうか?」と尋ねられると自信をなくしてしまうもので…。買い物に行ったときや外食に行ったときに、自分でも意識してこまめにチェックする必要があることを痛感しました。炭水化物が少なくても満足できる調理法の工夫も教えていただき、とても参考になりました。
 最後は灰本先生による、「ゆるやかな糖質制限食ガイドラインの完成」についてです。糖尿病及び糖質制限食に関する大規模な研究結果はもちろん、日本人の栄養摂取量の変化や運動量の変化、脂質摂取に関する研究、薬物との関係性など様々な研究の結果をもとに構成されており、感覚的にではなく、きちんとしたデータによるお話しで大変興味深く、わかりやすい内容でした。循環器の病院で働いている私ですが、糖尿病による合併症で恐ろしいのは「がん」と「認知症」だということも念頭において栄養指導をする必要があると改めて思いました。今後の研究結果も参考にして、指導に役立てていきたいと思います。

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