日本ローカーボ食研究会

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47.中国での新鮮なフルーツの消費と主要心血管疾患

「糖尿病=果物はだめ」な訳ではない
中国での新鮮なフルーツの消費と主要心血管疾患

Fresh Fruit Consumption and Major Cardiovascular Disease in China.
N Engl J Med  2016 Apr 7 Du H

背景:西洋人ではより多くのフルーツ消費は、心血管疾患の低いリスクと関係するとされている、しかし、フルーツの消費量が低く脳梗塞の発生率が高い中国ではそのような関係があるかどうかはほとんど知られていない。

方法:2004年~2008年の間、われわれは中国の異なった10地域から30~79歳の成人512,891人を集めた。320万人・年の追跡期間で、5173件の心血管疾患による死亡、2551件の主要冠動脈イベントの発症(致死的または非致死的)、14579件の虚血性脳梗塞、3523件の脳出血が、登録時に心血管疾患の既往歴のないあるいは降圧薬治療行っていない451665人の参加者の中で記録された。コックス回帰モデルを用いて新鮮なフルーツ消費と心血管疾患の発症率に関係するハザード比を求めた。

結果:全体で参加者の18%が日常的に新鮮なフルーツを消費していると報告した。参加者で新鮮なフルーツを全くかほとんど食べない群(非消費者群)と比較すると、毎日食べる群では収縮期血圧がより低い(4.0mmHg)、血糖値がより低かった(0.5mmol/L[9.0mg/dl])(両方ともP<0.001)。毎日食べる群を非消費群との調節ハザード比はそれぞれ心血管障害死が0.60(95%CI.は0.54-0.67)、主要冠動脈イベントが0.66(95%CI.は0.58-0.75)、脳卒中が0.75(95%CI.は0.72-0.79)、脳梗塞が0.64(95%CI.は0.56-0.74)であった。強い対数線形の用量依存関係がそれぞれのアウトカム発生と新鮮フルーツの消費量との間でみられた。それらの関係は、研究を行った異なる10の地域においても、またベースラインにおける患者特性により分類されたサブグループにおいても同様であった。

結論:中国人成人では、高いフルーツ消費は、より低い血圧値と血糖値と関連し、それ以外の危険因子やその他の食事因子と独立して有意に低い主要な心血管障害と関連していた。、

読後感想:ジャーナルクラブの開始以来、各薬剤師や灰本先生は、世界の主要な内科系ジャーナル(6種類、MEJM, Ann Intern Med, Lancet, BMJ, JAMA、Am J Clin Nutr)の最新論文のなかからそれぞれが自ら選んで英論文を抄読してきた。私はNEJMの担当になったが、今回のような食品、栄養関係の論文がNEJMに掲載されていることは最近の2年間にほとんどなかった。今回のような食事と疾患に関する大規模コホート研究はBMJやAm J Clin Nutrなどにしばしば掲載されている。NEJMに掲載されることは、それだけ重要な内容であるし、もしかするとNEJMが薬や技法だけでなく食事療法にも関心を持ち始めたのかもしれない。多くの甘い果物の摂取後に血糖値が上がることは間違いないが、長期的に見て、もし適度な果物摂取が血糖値を上げるのを相殺してなおかつ私たち東アジア人の脳心血管障害を予防するならば、食事の上でいろいろと制約を受けている糖尿病の方にとってはありがたい情報になると思います(薬剤師 松岡武徳)。

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