日本ローカーボ食研究会

日本ローカーボ食研究会

第10章 ローカーボによる体重減量

日本ローカーボ食研究会代表理事 
灰本クリニック 院長 医師 灰本 元

1.ローカーボで体重は減るか?

 ローカーボによる減量についてはおびただしい数の無作為化比較試験があります。それらをまとめたメタアナリシス(Tobias et al., Lancet Diabetes Endocrinol 2015)ではローカーボはハイカーボより減量効果に優れていました。しかも、ハイカーボ(カロリー制限食)が優れていたのは唯一ハイカーボ治療前に食べていた食事(カロリーを制限しない食事)に比べてだけだったのです。 

 当院では減量をするためにローカーボを導入することはありますが、ほとんどは高血圧患者で血圧を下げるのが目的です。そのデータをまとめていませんが、糖尿病でHbA1cを下げるために真剣に取り組んだ患者の体重がどのように変化したかについて、これまでに9つの臨床研究を行いました。すべての研究で平均2~3kg減りましたが、10kg以上減る患者もいました。ただ、なかにはHbA1cは下がっているのに体重は減るどころか逆に増える患者もいたのです。糖尿病患者245人を対象とする最近のわたしたちの臨床研究でも、治療の前後で体重は確かに平均して2~3kg減っています(BMIでは平均-0.8)。この患者群は治療前から糖尿病薬をまったく使っていないので、その減量効果には科学的に確かなものがあります。

 問題は糖質を制限すればするほど体重が減るかどうかです。2015年に糖尿病薬を服薬していない当院の糖尿病患者で解析した図10-1は(Metabolism 2015)、横軸の左に向かって糖質を制限すればするほど体重は減る傾向にあります。

10-1.png

しかし、有意差はあるもののばらつきが多く信頼性が高いとは言えません(スピアマン相関係数0.239)。わずか60gの糖質制限で12kgも減った患者もいれば、320gの厳しい制限でもわずか3kgしか減らなかった患者がいるからです。現在、245人のデータを解析中ですが、男性で見る限り、糖質制限量と減量の関係に統計的に有意な差があるとは言えないようです。つまり、ローカーボをがんばると血糖値は下がっても体重が減るわけではないようです。ただ、男性の場合糖質を減らせば減らすほど内臓脂肪は減りますから(皮下脂肪はそうとはいえませんが)、がんばれば腹がへこむ意義はありそうです。

2.体重減量のコントロールは複雑

9-2.png

 図9-2は体重と食欲のコントロールに関与する要因をストライヤーの生化学の教科書(2012年版)から抜粋しました。なんと10種類以上のホルモンや物質が関与しています。適正体重の維持は生命予後にきわめて重要ですから、体重が減りすぎないようにいくつもの安全網がめぐらされています。糖質摂取とそれに続くインスリン分泌は体重に影響する有力な要因であっても、その一因でしかないのです。したがって、糖質制限だけで体重を減らすというのには無理があると思われます。最近では体重に大きな影響がある新たな要因がわかってきました。それは腸内細菌叢です。この分野の研究は今後著しく進歩するものと思います。

 体重に比べると血糖値のコントロールははるかに単純で、糖質摂取量、身体活動度、インスリン分泌と抵抗性、グルカゴンによる糖新生の4つでほぼ網羅できます。糖質制限食は糖尿病のHbA1cを下げるのには有効ですが、減量に関して今一はっきしりないのはこのような理由からです。

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