日本ローカーボ食研究会

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25.2型糖尿病患者における血糖降下薬や治療戦略と心血管アウトカム

いろいろな薬や治療法による血糖値降下は,心不全のリスクを増加させるかもしれない!
2型糖尿病患者における血糖降下薬や治療戦略と心血管アウトカム 
-大規模無作為化比較試験のメタ解析-
Glucose-lowering drugs or strategies and cardiovascular outcomes in patients with or at risk for type 2 diabetes: a meta-analysis of randomised controlled trials.Jacob A Udell, et al. Lancet Diabetes Endocrinol 2015, March 17, 2015, http://dx.doi.org/10.1016/

背景:いくつかの血糖降下薬や治療戦略は心血管アウトカムへ有害な影響を及ぼす。われわれは2型糖尿病患者において様々な血糖降下薬や治療戦略が心不全の発症危険度を増加する程度を評価するために,そしてその発症危険度が血糖,体重管理の達成された差異と関連があるかどうかを証明することにした。

方法:我々は心血管アウトカムを評価した血糖降下薬や治療戦略の大規模無作為化比較試験のデータを収集するために2015年2月20日までのOvid Medline、Cochrane Library、それに合致する要約を検索した。一次エンドポイントは心不全の発症であった。相関リスクはランダム効果モデルから算出した。

結果:われわれは平均追跡期間4.3年の14の介入研究のデータ,総勢95502名を算入し,そのうち3907名(全体の4%)が心不全を発症した。血糖降下薬や治療戦略はHbA1c0.5%(SD 0.33)低下1.7kgの体重増加と関連した。全体的に見ると、血糖降下薬や治療戦略は標準的な治療と比較して心不全の発症危険度を増加させた(RR 1.14, 95%CI 1.01-1.30; p=0.041)。この影響の程度は血糖値を低下させる方法によって異なっていた (p=0.00021)。 血糖降下薬の中ではぺルオキシソーム増殖因子活性化受容体作動薬(チアゾリン系薬剤など)で最も危険度が高く(RR 1.42, 95%CI 1.15-1.76)、中間がDPP-4阻害薬 (RR 1.25, 1.08-1.45)、どちらでもないのがインスリングラルギンであった(RR 1.00, 95%CI 0.88-1.13)。それぞれの目標値に対する厳格な血糖管理(RR 1.00, 95%CI 0.88-1.13)や体重減量(RR 0.80, 95%CI 0.62-1.04)は心不全の発症と関連がなかった。回帰分析は血糖降下薬や治療戦略と関連して体重が1.0kg増える毎に心不全の発症危険度は標準的な治療と比較して7.1%増加する(95%CI 1.0-13.6)ことを示した (p=0.022)。

解釈:いろいろな薬や治療法による血糖値降下は,標準的な治療と比較して心不全リスクを増加させるかもしれない,そして,その程度は血糖降下の方法に依存しており,おそらく体重増加と関連している。

読後感想
糖尿病薬の心不全増加の副作用については以前からチアゾリン系で,最近の研究では体重が増えてしまうSU剤でも証拠が積み重ねられている。私たちが注目しているのはDPP-4阻害薬の動向で,この研究では平均4.3年の追跡期間で心不全をハザード比で1.25倍増やすようだ。DPP-4阻害薬は併用薬を間違えなければ低血糖はかなり少ない薬なので,ゆるやかな糖質制限食との相性はよい。したがって長期の安全性を正確に知りたいところである。安全性の研究はもっと長い期間追跡しないと本当のことは分からないので,今後も糖尿病薬全体で10年間もの長期に内服したときに心不全だけでなく総死亡,発癌が増えるかどうかを注視したい(渡邉 真弓,灰本 元)。

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