日本ローカーボ食研究会

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106.乳児期における酸分泌抑制剤及び抗生物質使用と幼児のアレルギー疾患の関連性

Association Between Use of Acid-Suppressive Medications and Antibiotics During Infancy and Allergic Diseases in Early Chilhood.
Mitre E et al. JAMA Pediatr. 2018 Jun 4;172(6)e180315.
Doi: 10.1001/jamapediatrics. 2018.0315. Epub 2018 Jun 4.

【重要事項】
 小児におけるアレルギー疾患は近年増加している。早期の薬剤(酸分泌抑制剤や抗生物質)への暴露は腸内細菌叢に影響を与える可能性があり、将来のアレルギーへの影響を与えるかもしれない。

【目的】
 生後6ヶ月までの酸分泌抑制剤または抗生物質を使用が幼児期のアレルギー疾患と関連があるかどうかを評価する。

【方法・結果】
 米国国防省のトライケア被保険者で2001年10月1日から2013年9月30日までに軍の医療制度データベースに出生医療記録がある小児792,130人を対象に、生後35日から少なくとも1歳まで、後方視的コホート研究を行った。出生後7日より多く入院または生後6ヶ月以内に何らかのアレルギー疾患を診断された者は除外した。データ分析は2015年4月15日から2018年1月4日まで行った。暴露はH2受容体拮抗薬、プロトンポンプ阻害剤、抗生物質のいずれかが処方された者。主な結果はアレルギー疾患(食物アレルギー、アナフィラキシー、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性結膜炎、蕁麻疹、接触性皮膚炎、薬物アレルギー、その他)。小児792,130人(395.215人[49.9%] は女児)が分析され、生後6ヶ月以内に60,209人(7.6%)にH2受容体拮抗薬、13,687(1.7%)にプロトンポンプ阻害剤、131,708人(16.6%)に抗生物質が処方された。それぞれの子どものデータは中央値4.6歳まで分析可能であった。H2受容体拮抗薬とプロトンポンプ阻害剤の補正ハザード比はそれぞれ、食物アレルギーで2.18(95%信頼区間2.04-2.33)、2.59(95%信頼区間2.25-3.00)、薬物アレルギーで1.70(95%信頼区間1.60-1.80)、1.84(95%信頼区間1.56-2.17)、アナフィラキシーで1.51(95%信頼区間1.38-1.66)、1.45(95%信頼区間1.22-1.73)、アレルギー性鼻炎で1.50(95%信頼区間1.46-1.54)、1.44(95%信頼区間1.36-1.52)、気管支喘息で1.25(95%信頼区間1.21-1.29)、1.41(95%信頼区間1.31-1.52)であった。補正ハザード比は生後6ヶ月に抗生物質が処方され場合、気管支喘息で2.09(95%信頼区間2.05-2.13)、アレルギー性鼻炎で1.75(95%信頼区間1.72-1.78)、アナフィラキシーで1.51(95%信頼区間1.38-1.66)、アレルギー性結膜炎で1.42(95%信頼区間1.34-1.50)であった。

Early_Chilhood1.jpg

【結論】
 この研究で生後6ヶ月以内の酸分泌抑制剤と抗生物質の使用は後のアレルギー疾患の発現の可能性を関連付けた。乳児における酸分泌抑制剤と抗生物質の使用は明らかに臨床的に有益性が認める場合にのみ使用すべきである。

【読後感想】
 米国では、”fussy baby”(機嫌が悪い赤ちゃん)に対して、確定診断を行わずにGERD(胃食道逆流症)を疑い、容易に酸分泌抑制剤が処方される傾向がある。 通常乳児の逆流はGER(胃食道逆流)で生理的なもので、生後4ヶ月で67%、10〜12ヶ月でも4%と、年齢と共に自然に改善する事が多く、真のGERDは少ない。米国では以前から安易な酸分泌抑制剤使用が問題視されてきた。この研究はその安易な酸抑制剤使用にさらに警笛を鳴らすものである。また、風邪に対して抗生物質が安易に処方されてきた日本でも耐性菌のみならず、将来のアレルギー疾患の発症に関連するかもしれない安易な抗生物質の処方は謹むべきである。


(医師 蟹江健介)

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