日本ローカーボ食研究会

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58.腸内細菌層形成後の小児期の過体重

腸内細菌層形成後の小児期の過体重:分娩方式、妊娠前の体重、出生後早期の抗生剤投与
Childhood overweight after establishment of the gut microbiota: the role of delivery mode, pre-pregnancy weight and early administration of antibiotics
TA Ajslev et al. International Journal of Obesity (2011) 35, 522–529 doi:10.1038/ijo.2011.27

目的:腸内細菌叢の形成と多様性に影響を及ぼす環境因子が後の過体重リスクに関連するという仮説が支持されていることを受けて、分娩方式(自然分娩あるいは帝王切開)、母親の妊娠前のBMI、 出生後早期(6ヶ月未満)の抗生剤の暴露が7歳時における過体重のリスクに影響を及ぼすかどうかを調査する。

試験デザイン:幼少期における抗生剤暴露の結果を伴い、7歳時に追跡が行われた縦断・前向きコホート研究

方法:妊娠前の母親のBMI、分娩方式、幼少期における抗生剤の投薬に関する情報を携えたDanish National Birth Cohortに登録された全体で28354組の母子を評価した。調査結果としての7歳時における身長と体重に対してロジスティック回帰分析を行った。

結果:分娩方式は幼少期の過体重と有意な関連は認められなかった。(OR: 1.18, 95%CI: 0.95-1.47)生後6か月までの抗生剤の暴露によって正常体重の母親から生まれた小児における過体重リスクの増加(OR: 1.54, 95%CI: 1.09-2.17)が認められ、逆に過体重の母親から生まれた小児における過体重リスクは減少した。(OR: 0.54,95%CI: 0.30-0.98)また肥満の母親から生まれた小児においてもそれと同じ傾向が認められた。(OR: 0.85,95%CI: 0.41-1.76)

結論:このコホート研究によって分娩方式を含め、妊娠前の母親のBMI、幼少期の抗生剤の暴露が後の小児期における過体重リスクに影響を及ぼすが明らかにされた。この結果は潜在的に腸内細菌叢の形成と多様性に対する影響によって説明されるかも知れない。

読後感想:今回の文献は分娩方式、妊娠前の母親のBMI、抗生剤の暴露といった環境因子による小児期の過体重への影響を解明している。幼児期の抗生剤の暴露がその後の肥満リスクと関連していることは前回示した論文およびいくつかのコホート研究から明らかとなっているものの、その他の環境因子の影響についてはこの論文を読むまで知ることはなかった。意外だったのは正常体重の母親と過体重、肥満の母親から生まれた小児とで抗生剤の暴露によるその後の体重変化に逆転現象が確認されたことであった。もちろん、結論として確立するには更なる研究が必要となることは明白であるが、大変興味深い結果であった。この分野に関してはもう少し他の研究についても探る必要がありそうだ。なお、最近のNatureに乳児期の抗生剤暴露と小児期の体重について総説が掲載されており、抗生剤によって大きく腸内細菌が破壊されると低体重児、中途半端に破壊されると肥満児になるとの記載があった。(薬剤師 北澤雄一)

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