日本ローカーボ食研究会

日本ローカーボ食研究会

第7回学術総会の印象記1

第7回 日本ローカーボ食研究会 学術総会(2017.3.11) 印象記1

瑞心会 渡辺病院 副院長 中村 了

 私事で恐縮ですが、ここ3年間、とある事情で名大病院地域包括医療連携センター(名古屋逓信病院内)勤務でして、名古屋市東区の地域包括医療・介護連携に関する仕事ばかりをしておりました。医療・医学というよりは社会実験(?)のようなもので、名古屋市東区の医療介護関係者の情報共有システム構築のために、連絡協議会を作ったり、月例会を開いたり、メーリングリストを作ったり、はたまた飲み会を作ったり。こんなことばかりしておりましたので、言い訳がましいのですが、私自身の医学的進歩は、この間ほぼ止まってしまっておりました。今回の学術総会のテーマは“肥満パラドックス”。司会のお仕事を頂戴したのですが、なにせ頭の中から医学が腑抜けてしまっており、3月から赴任した南知多の渡辺病院にて医学復帰リハビリ(?)を始めたものの、とても追いつかない状況。灰本先生にいくつか肥満パラドックスの論文を頂戴して、泥縄式で臨みました。
学術集会当日、午前の診察を終えて慌ただしく会場へ。開始時間ギリギリに滑り込み。まずは村元先生の特別講演“ゆるやかな糖質制限食による2型糖尿病治療ガイドライン2016の解説”が始まりました。村元先生の冷静な語り口が印象的で、現状、摂取している糖質の量と割合を評価した上で、糖尿病の重症度も加味して、糖質カットの量を決めていくことの重要性が示されました。
二つめの特別講演において、今回の学術集会のメインテーマ“肥満パラドックス”に関して、灰本先生が熱く語られました。その歴史的背景や日本の健康に関する国策にも触れつつ、年齢・性別・人種によって理想的な体重が同じなのか?違うのか?膨大な各種データをわかりやすく整理整頓していただきました。ともかくどんな人種であっても、もっとも長生きなのが“BMI=24kg/㎡”というのは、大きなインパクトでした。
 第二部では“体重と生命予後を考えさせられた症例”ということで、6つの症例が提示されました。心臓手術の周術期・がん・廃用症候など、幅広い領域からの症例群でしたが、そこから引き出された教訓としては、
①体重を増やすのは難しいが“糖質摂取+インスリン負荷”が効果的かもしれない
②癌など重症疾患の予後改善には体重の維持が肝要
③したがって、なんでもかんでも糖質カットという原理主義では、実臨床の対応は不能
と言ったところでしょうか。
いやいや、おかげ様で、現在の私のBMI(26kg/㎡あまり)を減らす気力は、まったく消し飛んでしまいました。
振り返れば本研究会、ずいぶん前から糖質摂取励行も治療方法の一つとして採用してきていました。たとえば痩せの人、あるいは、糖質を制限しすぎる人に対して。肥満がある生活習慣病など、一定条件を満たせば“ローカーボ食”という方法論を持っている、ということであって、決して糖質制限一辺倒ではなく臨機応変。実臨床家のあるべき姿です。しかし、“ローカーボ”という言葉が本研究会の看板になってしまっており、このことが、これまでよりも一層不可解に感じられた学術集会だったなぁ・・・と感じられたことでした。

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